畳部屋の無いアパートや一軒家が珍しくない現代の住宅では、寝具が敷布団の場合、必然フローリング床に敷いて毎晩を過ごすことになります。
ベッドに比べ、転落の心配がなく、省スペースであり、4本足のベッドフレームによる床との隙間や凹みもないので床の手入れがしやすいと、敷布団は様々なメリットがあります。
このとき、最も意識するべき点として、湿気の管理が挙げられます。湿気は暮らしにおける家具の敵になる場合が多く、布団も例にもれません。
湿気を放置すると、布団はもちろん、床、身体と三方悪しです。その湿気リスクについて、日頃できることに絞った対策〇点とあわせて確認していきます。
湿気の条件とリスク
日本は湿度の高い国であり、1年のうち雨が降る日は100日を超えるほどです。
年間を通した平均湿度は、北海道や九州、関東のいずれの地域でも約65~75%と、カビやダニの繫殖・増殖にとってこれ以上なく都合の良い気候になっています。
加えて、睡眠時は1晩で200ml。代謝の良い人であればその数倍の寝汗をかいています。
その汗は身体から寝間着、敷布団、そして床へと下りていくため、放置していると布団の中のダニが増えたり、布団や床にカビが発生する原因となります。
よくある勘違い:冬は汗をかかないし、空気が乾燥しているから平気
非常によくある勘違いとして、「冬場は、運動していても中々汗をかかないし、空気も乾燥している。だから、布団に入っていても汗をかく量は少ないし、湿度も低いのでは?」というものがあります。
特に、加湿器を使うほどに空気が乾燥している家で暮らしていると、「除湿どころか加湿したいくらいなのに」と思いたくなる気持ちもなることでしょう。
ただ、そんな乾燥し切った住まいで寝る場合でも、カビの原因になる水分があります。それが結露です。
冬場に布団のカビの原因になるのは、温度差による結露
たとえば、冬に外でマスクを長時間着けていると、全く喋っていなかったのにマスクの内側が濡れていることがあります。
あれも結露で、人の温度と布との温度差でも充分に結露は起き得ます。
また、寒い日であるほど、暖房を点けた部屋の窓の結露が物凄いように、温度差があるほど結露は大きくなります。
つまり、確かに空気は乾燥しているものの、体温と冷たい床との温度差による結露がカビの原因になるため、油断は禁物です。
むしろ、結露は床と布団の間で直接発生するので、冬の方がカビの発生は起きやすいといえます。
床暖房で結露対策?
ここで、「冷えた床が結露の原因なら、床暖房を点ければ結露は起きにくくなるのでは」と思った人もいるかもしれません。
結論としては、その通りです。床暖房を点けたフローリング床に布団を敷いた場合、温度差があまりないので当然結露も起きにくくなります。
しかし、床暖房を点けっぱなしにして、その上に布団を敷いて眠るのは、身体が乾燥してしまうのでおすすめできません。
喉の痛みや、肌や髪のカサつきの原因になりますし、床暖房を消すと結局睡眠時間中に結露が起きる温度差になります。床暖房を布団のカビ対策として使うのは、避けた方が良いでしょう。
湿気による悪影響
布団への影響
フローリングに布団を敷いた場合、最も湿気による影響が大きいのが布団です。なぜなら、フローリングは湿気を吸わず、就寝中寝間着が吸った分を除くほぼ全ての湿気を布団が吸収してしまうためです。
布団に湿気が残ると、カビやダニの原因になります。詳しくは、後述の身体への影響で解説しますが、放置すると病気の原因になるため、カビの広がり具合によっては布団を処分し、新調する必要があります。
フローリングへの影響
フローリングがカビるのは、敷物で空気中に逃げられずに溜まる湿気が原因であることが多く、敷物の中でもカーペットやマットに比べて汗という水分が溜まりやすい布団は、その代表例といえます。
黒カビは繫殖しやすく、根本から対処しないとどんどん繫殖していきます。床だけでなく、壁やタンスに収納された衣類へと被害が広がっていってしまいます。
カビ取り剤や漂白剤を使って取り除くことはできますが、フローリングの色落ちという副作用は避けにくく、見映えに影響します。
身体への影響
慢性的に強い痒みが出る湿疹は、主に肘や膝といった肌同士が擦れやすい部位や、首周りやお尻といった角質が薄く刺激に弱い部位などに現れます。
痒みのため無意識のうちに搔き壊してしまい、血が出るほど傷ついたり更なる痒みの原因になります。
肌が赤くなってしまった場合、皮膚科を受診するか、軟膏やクリームで対処しましょう。
鼻炎
くしゃみや鼻水などの症状です。比較的軽い症状のため、症状が出ても特に改善を考えずに自然に治まるのを待つ人も多いです。
確かに、何かと忙しい現代では、鼻炎くらいで耳鼻科の受診は大げさと考えたり、面倒くさがったりするのは不思議なことではありません。
ただ、それが原因で症状が長期化する可能性があります。そのため、事前の予防で鼻炎そのものを起こさせないことが重要になります。
喘息
ダニのアレルギー物質による喘息は、風邪によく似た咳き込みを引き起こします。
特に、小さな子供が咳き込み発熱する小児喘息は、原因がダニであることが多いため、子育て家庭の場合はよりダニ予防のための湿気対策を意識した方が良いといえます。
また、カビが喉を通じて肺に届いてしまい、喘息から肺炎に繋がる可能性もゼロではありません。
もし発熱が中々治まらず、息苦しさが続くようなら、喘息にとどまらず肺炎の兆候を疑って内科を受診しましょう。
結膜炎
目の白目部分に起こる、腫れたり、充血したり、痒みが出たりといった症状が結膜炎です。
花粉症による目の痒みに性質が似ています。季節が限定されている花粉症と違い、通年性、つまり一年中目の痒みが発生する性質なため厄介です。
カビやダニを対策するだけでなく、こまめな手洗いも、結膜炎予防には有効です。
対策
カビやダニの原因となる湿気を布団や部屋にため込まない方法として
- 布団を畳んで、布団の裏や床の湿気を空気中に逃がす
- 窓の換気をしたり、換気扇を点ける
- すのこや除湿シート、除湿剤といった道具を使う
などがあります。その他に、湿気対策に役立つポイントを4点紹介します。
窓の換気は、梅雨の時期にもやるべき
換気について誤解しやすいこととして、
梅雨の時期は外がじめじめしているから、窓を開けると湿った空気が部屋に入ってくる(ので、窓は閉めっぱなし)
と思っている人は多いです。実は正しい対処法はその逆で、梅雨の時期こそ窓を開けて換気をした方が湿気対策になります。
なぜなら、雨天の日は屋内の方が外より湿度が高くなり、窓を閉め切ると湿度の高い空気が部屋にこもるためカビが発生しやすくなるからです。
もちろん、雨が降っている最中なら、雨が吹き込まないように窓は閉めるべきですが、雨は降っていない時間は、梅雨の時期でも積極的に換気をして下さい。
除湿シートに比べて、ござは微妙
布団の下にモノを敷くことでの湿気対策を考えたとき、代表的なのはすのこや除湿シートになります。
これらに比べて、ござはどうでしょうか。残念ながら、ござを敷くのはあまり有効な手段とはいえません。
- 薄いため、あまり湿気を吸ってくれない
- 丸洗いができず、毎日フローリングの上から外したり、定期的に外干しする必要がある
という2点で、ござを布団の下に敷いても手間が少なくなりにくいです。もちろん何も敷かないよりはマシですが、できれば別なものを使うようにしましょう。
エアコンを使うときに衣類も同時に湿気ケア
クローゼットやタンス、押し入れの衣類も、エアコンで効率良く湿気をケアすることができます。
中に除湿剤や備長炭を置くことが最も有効ですが、それらを用意できなくても、エアコンで除湿をする際にクローゼットやタンスなどを開け、そこまでの部屋の扉も開けることで湿気を取り除くことができます。
冷房機能でも同様に、衣類の湿気ケアに使えますが、冷房を点けるときは部屋を涼しくすることが主目的になるでしょうから、「涼むために点けたのに、冷気が他所に行ってしまいかえって非効率」ということがないように注意して下さい。
弱冷房方式と再熱方式の違いを知って効率的な除湿
エアコンを用いた除湿機能には、弱冷房除湿と再熱除湿の2方式があります。
- 弱冷房方式(ソフト除湿)
- 気温と湿度を両方下げる
- 風量が抑えられているため、電気代は安め
- 再熱方式
- 気温はそのまま、湿度だけを下げる
- 消費電力が弱冷房よりも大きく、電気代も少し高い
ただ、どちらの方式の除湿なのかはリモコンに直接書かれてはいないため、エアコンの取扱説明書などで確認する必要があります。
ボタンごとの機能は、以下の通りです。
ここで気を付けるべき点として、弱冷房方式のエアコンは、除湿ボタンを押しても気温が少し下がります。
弱冷房方式は、再熱方式よりも消費電力が低い一方で、気温が低く湿度が高いという状況で湿度だけを下げるということができないというデメリットがあります。梅雨の気温が低い時期に風邪をひかないように注意してください。
湿気管理だけで、メンテナンス費用はかなり抑えられる
敷布団は床に接して使う都合上、敷きっぱなしにすると湿気が悪さをして布団、フローリング、そして身体に悪影響を及ぼします。
カビやダニが繫殖すると、布団の買い替え、床の張り替え、治療費といった多額の費用に繋がるため、経済的ではありません。特に、布団やフローリングと違い身体は替えが利かないので、病気のリスクはできるだけ避けるべきといえます。
しかし、住宅の洋風化が進み、寝室に布団を敷いたままでも生活が困らなくなった現代において、布団を毎日畳んだり干したりするのは決して小さくない労力といえます。
そこで、湿気対策の道具や、窓の換気、エアコンの使い方といった労力がかからない手段を活用することで、重い布団を日々持ち運ぶしんどさをなるべく抑えつつ湿気対策ができます。カビやダニによるメンテナンス費用は、そうした手軽な湿気管理だけでもかなり抑えることができるのです。