ノンワックス、ワックスレス、ワックスフリーなど、ワックス不要の特殊なフローリングの住宅はメリットもあり、昨今増えてきています。
ただ、
- 不動産会社の人から、ワックス不要のフローリング(以下、ノンワックスと表記します)で手入れが楽で良いですよと言われたけれど、掃除ってどうすれば良いの?
- そもそもノンワックスってどういう意味? ワックスしていないってコト?
- ノンワックスのフローリングって、どんなことでトラブルになるの?
などなど、主にお掃除・お手入れの面で「あれ? どうするんだっけ?」となる人が多いです。
そこで、ノンワックスの特徴と、お手入れにおけるポイントをOK行動、NG行動に分けて解説していきます。
フローリングメーカーや不動産会社に電話で聞くのは面倒、質問するのも気が引けるという人でも、この記事一本で大丈夫です。
ノンワックスは、特殊なフィルム層でフローリングを守っている
ノンワックスの仕組みは、フローリングの表面に特殊なフィルムを張り付けています。スマートフォンやタブレットに貼る保護フィルムやケースと同じようなものです。
このフィルムのおかげで、フローリングがキズや汚れに強くなるというシンプルな仕組みです。
メリットその1:出費を抑えられる
普通のフローリングだと、定期的にワックスがけをして床をキズや汚れから守りますが、ノンワックスは表面のフィルムがこの役割を果たしてくれるため、ワックスがけが要りません。
ワックスを塗ったり剝がしたりするとき、たとえ業者に頼まずDIYでやったとしてもそこそこの出費になるので、これを丸ごとゼロにできるのはわかりやすいメリットです。
メリットその2:普段の掃除が楽になる
フィルムのおかげで、キズを防げるだけでなく、汚れが浮きやすくなるので普段のお掃除もやりやすくなります。
より詳しいお掃除・お手入れの方法は後述しますが、ノンワックスは普通のフローリングや、ワックスがけのフローリングより掃除が楽であることは確かです。
お手入れは、水っ気や薬品を避けることがポイント
ノンワックスフローリングのお手入れにおける最大のポイントは、「水っ気、薬品を避ける」です。特に、水拭きに関しては「そんなこと知らなかった」という人が非常に多いです。
掃除の前に一度、やり方に問題がないかを確認しておくと良いでしょう。
OK行動
乾(から)拭きや掃除機掛け
埃や髪の毛、ゴミなどの掃除は、基本的に乾拭きや掃除機掛けで大丈夫です。毎日やっても特に問題ありません。
しっかり絞ったタオルや雑巾で水拭き
様々なサイトやブログで言われているように、床を濡らすのはNGです。とはいえ、水拭きをしたい状況は必ずやってきます。
床濡れがNGというのは、要するに、フローリングに水っ気が残ることがNGということです。なので、硬く絞ったタオルや雑巾で拭き、その後で乾拭きをする等して水っ気を残さないようにすれば大丈夫です。
ただ、腕力に自信がなくて硬く絞れないという人もいます。そこで、タオルや雑巾の半分だけを濡らして絞るようにしましょう。
こうすることで、しっかり絞れた布を手軽に用意できます。
NG行動
水拭きを毎日する
水拭きの頻度が多すぎると、床に水分が染み込んでしまいフローリングを歪める原因になります。
水拭きは毎日はやらず、1~2週間に1回や10日に1回ぐらいのペースに留めた方が無難です。
水っ気を乾いた雑巾やタオルで拭き取ると、ムラになりにくくなるのでより完璧です。
アルカリ洗剤やスチームクリーナーを使う
皮脂汚れや油汚れによる黒ずみは、キッチンハイターを薄めて拭いたりスチームクリーナーを使うと取りやすいことを知って、ノンワックスのフローリングでも実践してしまったケースが散見されます。
ただ、それらは床材に悪影響を及ぼす可能性がとても高いので、使用は控えるべきです。
もしベタついた汚れや黒ずみをどうにかしたい場合、キッチンハイターやスチームクリーナーではなく、キュキュットやMagicaなどの中性洗剤を使用すると良いでしょう。
その場合も、中性洗剤を薄めたもので水拭き、その後に乾拭きで仕上げというアルカリ洗剤のときと同じ流れになります。
ダスターなどの化学ぞうきんを使う
ダスターやサッサ、ダスキンモップなどの化学ぞうきんは、ミネラルオイルなどの油成分がノンワックスフローリングのシート部分を変色させてしまうリスクがあります。
そのため、これらの使用はNG行動となります。もし「化学ぞうきんで拭いた際のツヤ感が好き」という場合、専用のワックスや、ツヤのあるUVフロアコーティングをかけてもらうという方法があります。
よくあるトラブルと原因
市販のワックスがけをしてしまう
ノンワックス関係で最も多いトラブルのひとつが、ホームセンターや通販で買ってきたワックスをかけてしまうことです。
ノンワックスの表面はワックスも弾いてしまうため、ワックスがけをしてもすぐ剝がれたり、白っぽく粉っぽく床を汚す原因となります。
ノンワックスにワックスがけをしたい場合、フローリングメーカーが扱っている特殊なノンワックス用ワックスを使う必要があります。市販ワックスは買わないようにしましょう。
件数はそう多くありませんが、ノンワックスに対する知識のないクリーニング会社が、ワックスがけをしてしまうというケースもあります。
もし、自分ではワックスがけをしていないのに床の様子がおかしい場合、クリーニング会社が犯人である可能性を頭の片隅に入れておくと、トラブルの原因判明の助けになるかもしれません。
フィルムが劣化した部分から水が染み込む
経年劣化や、椅子やテーブルの引きずり、モノを落とすなどで特殊フィルムが劣化すると、水分は更に脅威となります。
とはいえ、そもそもノンワックスのフィルム層がどれぐらい劣化しているのかを目視で確認するのは困難です。
更に、経年劣化に関しては、フローリングメーカーも「キズができた部分を補修して、その後は(市販の)ワックスがけで保護して下さい」という姿勢です。(2021年6月に、実際に大手メーカーに経年劣化やキズの対処法を問い合わせた際の返答です)
なので、もともとノンワックスは、実際には何十年もは保たないという認識でいた方が、過度な期待が故のトラブルになりにくいでしょう。
たとえ5~10年間でも、ワックスがけをDIYしたり業者に頼まずに済む金銭や時間のメリットは確実にあります。
販売側が、ワックスやコーティングをするなと言う理由
新居を契約する際、ノンワックス加工をしてあるフローリングについて、ワックスがけやコーティングを禁じている場合や、ワックスやコーティングをしたら保証対象から外すという物件もあります。
新築なら通常、2年間の瑕疵担保責任があるにも関わらずです。
なぜ、販売側がそのようにワックスやコーティングをするなと言うか、それには大きく分けて2つの理由があります。
原因の押し付け合いが発生する
ワックスやコーティングは、フローリングメーカーにとっては部外者による改造です。
そのため、ワックスやコーティングをした後に、床鳴りや変形などの不具合が出た際、フローリングメーカーとしては「ワックスやコーティングが(不具合の)原因だ」と主張せざるを得ません。
もちろん、ワックス業者やフロアコーティング業者もまた、「自社での施工が原因ではなく、元々フローリングそのものが悪い」と言います。
このような経緯でトラブルになる可能性があるため、予めワックスがけやフローリング施工をするなと言っているわけです。
専用ワックスもメーカーにとって収入源
ノンワックスのフローリングをメンテナンスする場合、そのフローリングメーカーが販売している専用のワックスを使う必要があります。
つまり、ノンワックスが売れた時点で、フローリングメーカーにとってはその専用ワックスも売り上げ見込みとして期待できるわけです。
そんな理由から、メーカーが悪徳業者でなく、良質なノンワックスのフローリングを扱う優良企業であったとしても、「ワックスやコーティングは自社の売上が削られるからやめてね」という側面が一切無いとはいえません。