フローリング床は何かと傷つきやすいものなので、キレイな床を長く保つためには何らかの対策を講じる必要があります。
ただ、対策といっても色々な手段があり、方法によってフローリング保護の程度や値段も違うため、自分にとってどれが最適な手段なのかという指針がないと選びづらいです。
そこで、フローリングの傷防止の手段を、値段や効果、どういう家庭向きかに焦点を当てて解説していきます。

安さと効果は基本的に比例する
値段とフローリング保護の効果は基本的に比例しますが、全ての住宅でガッチリ保護するべきかというと、そうではありません。
たとえば、短期出張で一時的に住んでいるだけの人や、大学生活中だけアパート・マンションを借りている人が、10~20年と保つ高価格のフロアコーティングをかけるのはもったいないです。
逆に、マイホームを買ってこれから生涯をそこで暮らすつもりの人が、掃除以外なんのメンテナンスもしないと、十数年後にはフローリングが痛んで張り替えが必要になってしまい、大きな出費になってしまいます。

安:家具にキャップやカバーを着ける

日常生活の中では、椅子やテーブルの引きずりが最もフローリングが傷つきやすい状況の1つです。
椅子やテーブルだけでなく、キャスター(家具に着いている小さな車輪のこと)付きの家具を動かすときや、大掃除のために家具を動かすときなど、丁寧に扱っていても細かい傷は知らぬ間に積み重なります。
よく動かす家具にはキャップやカバーを着けることで、フローリングにかかる負担を軽減できます。フローリングだけでなく、家具の傷や減りも軽減してくれるので、安価かつ効果的な対策です。
安:カーペットやマットなどの敷物を敷く

普段動かさない家具や汚れやすい場所には、カーペットやチェアマット、ジョイントマットといった敷物が有効です。
たとえば、普段テーブルを動かさないならそこにカーペットを敷けば、テーブルの重さによるフローリングの凹(ヘコ)みを軽減できますし、テーブルから物を落としても物とフローリング双方の衝撃をやわらげられます。
広く敷いておけば、傷や汚れだけでなく窓からの陽射しによるフローリングの日焼けも防いでくれます。
リビングに限らず、水はねや油はねの機会が非常に多いキッチンにも、汚れ防止にマットを敷く家庭は多いです。
ただ、注意点として、敷物を敷く場所に既にカビが生えている場合、カビが敷物に移って広がってしまうリスクがあります。事前にフローリングにカビや変色が起きていないかを確認しておきましょう。
中:クッションフロアを敷く
クッションフロアはビニール系のシートで、クッションと名前にある通り柔らかく、割れ物を落としたときも通常の床に落としたときより割れにくいクッション性の高さが特徴です。
ビニールなので水に強く、ハサミやカッターで簡単に切り張りができるので、床全面を保護しておきたい場合に有効です。
防音性もあり、たとえばマンションの上階に住んでいるご家庭なら、クッションフロアを敷くことで騒音対策にも使えます。
ただ、クッションフロアは劣化が早く、10年程度が寿命といわれています。熱に弱いため床暖房NGのものもあったり、タンスなどの重い家具の下に敷くと凹んで跡が残って見栄えが悪くなる、湿気で自然に剝がれるとカビの温床になるなどのデメリットもあります。
とはいえ、傷防止という観点からすると、手入れも楽でおすすめの手段といえます。劣化が早い点も、模様替えの機会に丁度良いと考えればデメリットばかりとはいえません。
中:ワックスがけをする
フローリングそのものの色合いや質感を気に入っており、敷物を使いたくはないが、傷はちゃんと防止したいという場合は、ワックスをかけるという手段があります。
ツヤが出るので多少質感は損なわれますが、キレイな見た目になり傷や汚れもガードできます。
ワックスシートで普段の掃除感覚でワックスがけができるので、手間もそこまでかからず、液剤の保管場所を取るなども必要ないお手軽さもポイントです。
ただ、 年1回程度の定期的な塗り直しや、数年おきの剝離をしないと、ワックスそのものが汚れの原因となり見栄えが悪くなることに気を付けなければなりません。
高:フロアコーティングをかける

フロアコーティングは、床に塗膜を張って保護するという手段としてはワックスがけに似ていますが、その費用も効果もワックスがけとは段違いです。
ワックスと違い、一度塗ってしまえば数十年間は何のメンテナンスも不要で、通常の掃除だけで充分になります。家具の引きずりや裸足で歩き回るなどによる、フローリングへの傷もかなり防げます。
デメリットとしては、傷防止の手段の中では格段に高額です。少なくとも、5年と住まないような住居にコーティングがけはまずおすすめしません。
何十年と住むなら、床の張り替え機会を減らせてメンテナンス費もかからずに済むので意外と安価といえますが、短期在住の場合はそういったメリットが何一つ受け取れずに退去することになるため、もったいないといえます。
また、業界外の人はあまり知らないことですが、フロアコーティングには水性と油性とがあります。このとき水性のものは、油性に比べて「安い」ぐらいしかメリットがなく、品質が悪いです。
こういったことを知らずに「フロアコーティングだから」と水性ウレタンやアクリルを選んでしまい、低品質な仕上がりに後悔してしまうリスクがあることも、フロアコーティングのデメリットといえます。
種類 | キャップやカバー | 敷物 | クッションフロア | ワックスがけ | フロアコーティング |
コスト | 安い。非常に手軽 | 安い。カバーほど手軽ではない | 中くらい、耐久年数10年程度 | 安い。1年1回ペースでやり直す | 高い。耐久性年数10~30年程度 |
範囲 | 局所的 | 局所的 | 床全面 | 床全面 | 床全面 |
どんな人向け | 椅子やテーブルをよく使う | 重い家具を使う。床が隠れるのが気にならない | お気に入りのデザインを見つけるのが好き | 床を光らせたい、こまめな掃除が好き | 長期的に住む予定。マイホームやマンションを買った |
フローリングの傷は生活習慣ではなく、仕組みで防ぐ
フローリングに傷がつく原因は、そのほとんどが日々の日常生活の中にあります。
とはいえ、対策として「傷が付かないように気を付ける」というのは現実的ではありません。椅子をそっと引いたり、神経質に床掃除をして砂埃を取り除いたりという生活はストレスになります。
そうではなく、そもそも傷が付きにくい仕組みを、床や家具そのものに施してあげます。そうすることで、同じように生活していても、数年後の床の状態は大きく違ってきます。
どれくらいしっかりと傷対策をするかは、住んでいる環境や、かけられる費用をお財布と相談しつつ決めます。いずれの方法でも、最も効果的なのは床が傷つく前です。