ノンワックスやワックスレスとも呼ばれるワックス不要フローリング(以下、ワックスフリーと表記)は、定期的なワックスがけの面倒がなくなりお手入れも簡単なので便利なフローリングです。
ただ、ワックス不要の意味・性質を誤って認識した結果、フローリングに汚れやキズがついてしまったときに対処を間違えてしまい、更なる惨事を引き起こす可能性も。
そうならないように、正確な情報を確認していきます。

ワックス不要のメリット?
ワックスがけをする必要がなくなるので、特に、手間と金銭面のメリットが大きいといわれています。
ワックスがけは1年に1回程度やる必要や、数年に1度、汚れがたまったワックス層を丸ごと剝離する必要があります。
コレにはお金も手間もかかるため、DIYの場合も業者に頼む場合も面倒です。
なので、それらをまるごとゼロにできるワックスフリーのメリットは大きく、戸建だけでなくマンションやアパートでもワックス不要のものが増えている。そういう背景があります。
ワックス不要フローリングの仕組み
ワックスフリーの真相は、フローリングの表面に特殊なフィルムを張り付けています。スマートフォンなどに貼る保護フィルムをイメージするとわかりやすいでしょうか。
このフィルムのおかげで、キズが汚れに強くなり、ワックスがけが必要なくなるという仕組みです。
キズつかない、汚れないというワケではない
ただ、最も誤解されやすいポイントとして、「キズや汚れがつかないワケではない」という点があげられます。
たとえば、スマートフォンに保護フィルムを貼って使っていても、指の皮脂で汚れたり擦り傷がつくことで画面が少し見づらくなっていきます。
それと同じように、フィルムを貼ったワックスフリーも普通に使い続けているうちに汚れが目立ってきますし、キズもついていきます。
フローリングそのものをダメにする流れ
そうなったとき、「ワックス不要だから」とキズに対処せず、普段通りの掃除だけを続けていると危険です。
そうなると、やがてキズや汚れがフィルムの下のフローリングそのものにまで広がり、結果フローリングをダメにしてしまいます。
逆にいえば、キズを発見したときにワックス補修といった対処をすれば、「修復不可能なキズになりフローリングそのものを張り替えるハメになる」という最悪のシナリオは回避できます。
メリットの罠
さて、ここまででお気づきかもしれませんが、ワックスフリーのメリットには1つ大きな罠があります。
それは、ワックスフリーで、手間やお金がかからなくなることはないということです。
より正確に言うなら、ワックスがけの手間やお金は確かにかからなくなるが、フローリングをメンテナンスする手間やお金がなくなるワケではないということです。
たとえるなら、「電車通勤なら、自動車のガソリン代や車検費用、重量税がかからなくなるし、運転しなくて良いからラクだよ」と言うようなもの。
確かに運転という手間や、燃料・税金などのお金はかからなくなりますが、「通勤時間」という手間も「交通費」という出費もなくなりませんよね。
この部分を理解していないと、フローリングそのものにキズや汚れがついたとき、不動産会社とトラブルになる可能性があります。
フローリングへのキズや汚れを防ぐために
ワックス不要フローリングは、定期的なワックスがけの必要がなくなり掃除がしやすくなるものの、キズを防ぐフローリングの保護としては不十分です。
ただ、キズがなく美しいフローリングを長く保つために、できることが2つあります。
ワックス不要フローリング専用のワックスを使う
1つは、このワックスフリーのためのワックスを用いて、フローリングを保護することです。
「ワックス不要の床にワックス? 何言ってるんだお前」と思うかもしれませんが、実は、フローリングメーカーは専用の特殊なワックスを販売しており、それに限りワックスがけをすることができます。
というより、普通のワックスでは特殊フィルムのせいではじかれてしまい、塗ってもすぐに剝がれてしまう関係上、使うことができません。
なので、ワックスがけを検討する場合、市販のものを買いにホームセンターやネット通販を探すことは控え、住宅を契約したときの不動産会社や建築会社に問い合わせた方が良いでしょう。
【裏話】ワックスフリーが人気な理由
※ここでは、少し記事の趣旨から外れた内容になります。「はやく床をキレイにキープする方法を知りたい」という人は、この部分は読み飛ばして下さい。
ワックスフリーは、「面倒なワックスがけ、剝離作業をしなくて良くなる」というメリットがウケて、様々な住宅に普及しています。
そしてこの加工、実は住宅の契約者だけでなく、フローリングメーカーにとっても大きなメリットがあります。
それは、先述した専用ワックスの存在です。
ワックスフリーにキズや汚れが目立ってきたとき、そこらの市販ワックスは使えません。メーカーが売っている専用のワックスを使う必要があります。
つまり、それはメーカーにとって「ワックスフリーの住宅が売れれば、今後メンテナンスが必要になったとき、自社の専用ワックスの売り上げが見込める」ということになります。
「フローリングを1件分売るだけ」なのと、「フローリング1件分に加え、メンテナンス費の分も売れる」とでは、後者の方が良い利益が期待できることはメーカーにとっても明らかです。
なので、ワックスフリーは使用者にとって掃除がラクというメリットだけでなく、メーカーにとっても期待できる利益額が高くなるオイシイ商材というワケです。
フロアコーティングをかける
もう1つの手段は、フロアコーティングがけをすることです。コーティングもワックスフリーと同じく、「ワックスがけ要らずで、キズや汚れに強い」ことがメリットですが、その強度がまるで違います。
モノによっては自動車の防キズコーティングに近い硬さほどもあるフロアコーティングは、ヒトが歩く摩擦やペットの爪、椅子やテーブルの引きずり等から床を守ってくれます。
このとき、大切なのはフロアコーティングの材質です。特に水性ウレタンコーティングは、ガラスやUVといった油性コーティングに比べて「安い」ぐらいしかメリットがなく、肝心の耐久力に大きく劣ります。
そのため、安物買いの銭失いを避けるためにも、コーティングを選ぶ場合はガラスやUV、シリコンの中から選ぶのが無難です。
【番外】住む予定期間が長くないなら、そもそも何もしないのもアリ
ここまで、「長く暮らす場合にワックスフリーだけでは不十分」であること、「フローリングをキレイに保つためにできること」について解説してきました。
一方で、「元々今住んでいる住居には、長く住む予定がない(例.10年以内程度)」という場合もあります。たとえば、転勤が多い家庭などです。
そういった場合は、ワックスフリーのお手軽さのメリットだけを享受し、何の対策もしないことも1つの選択肢です。
もちろん、数年経ってくるとキズや汚れが目立ってはくるものの、よほど使い方が荒くない限りは「床が抜ける」「床が腐る」といった事態になる可能性は低いです。
そのため、専用ワックスやコーティングにお金を払うより、普段の掃除で退去や売却時の修繕費をなるべく抑えるようにした方が、結果的に財布に優しい結果に落ち着くことが期待できます。
